子カラスの悲劇 そして2度ひなを孵した親カラスの不屈の意志

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カラスの子育て

カラスの子育て

もともと我が家の庭周辺はカラスのカタアシ君達のなわばりだった。ところが2年前の初夏に、カタアシ君は娘カラスのビビにあっさりとなわばりを譲ってしまった。そしてそれっきり何処かへ行ってしまった。

片足のカラス、カタアシ君
これがカタアシ君

2021年、ビビは1羽の子を育てあげた。それがガー子ちゃん。そして今年も又ビビは春から巣作りに忙しかった。雪が溶けて間もなくするとビビは、うちの庭に降りては枯れ枝などをよく拾い集めていた。細い棒を咥えてはうちの北側のほうに飛んで行く。よく見て見ると、通りに面した街路樹の高いところに巣を作っているようだった。

カラスのガー子ちゃん
これはガー子ちゃん

そのうちビビの姿があまり見えなくなった。街路樹をよく見て見ると、ビビが巣に収まってどうやら卵を温めているようだ。真面目な顔をして、じーっと巣に収まっているビビの姿が可愛らしい。時たま巣から飛び立つ。何か食べるものを見つけてはすぐに巣に引き返し、再び抱卵に戻る。

5月の半ば頃だろうか、ビビの旦那も加わり交互に、頻繁に巣に出入りするようになった。雛が孵ったようだ。そのうち家の外に出ると、北のほうからグワァ、グワァっと奇妙な音が聞こえてくるようになった。孵ったカラスの雛が親に餌をねだって鳴いている声だった。

ビビ達が巣にもどってきた時に双眼鏡でのぞくと、下手くそな巣から2羽の黒い頭が上下しているのが見える。小さなクチバシが開くと、口の中の色は真っ赤だ。体が黒いだけに、その口の中の赤い色が余計目立つ。ビビ達がその赤い口にくちばしを突っ込むと「グガガガガガぁ〜」と面白い鳴き声になる。その可愛らしくない鳴き声が、余計可愛らしく思う。

ビビは今年も無事に雛を孵す事が出来た。じきにうちの庭に、ビビが子ガラスを連れて遊びに来るだろう。その日を楽しみに待っていた。ところが6月になるころ、ビビがぜんぜん巣に向かわなくなった事に氣がついた。巣は静まり返っている。そして巣の形状もずいぶんと崩れている。何かが起きたらしい。子ガラス達がいなくなった巣には、もうビビ達は立ち寄る事はなくなってしまった。いったいカラスの巣に何が起きたのか?

再び巣作りを始めたビビ?

巣のある木の下に行き子細に眺めてみた。赤い口を開けてガーガーと鳴いていた子ガラスはもういない。地面にも堕ちていないし、死骸も見つからない。何が原因かは分らないが、雛達がいなくなってしまった事だけは確かだ。

そんな6月の半ば頃、庭に来ていたビビ達をよく見ていると、なにやら枯れ枝などを咥えては何処かへととんで行く。最初その事に気がついたのは妻だった。

「ビビが枝を咥えている。ひょっとして、また巣を作ろうとしているんじゃないかな」

確かにビビ達は、庭に来ては枯れ枝や枯れ草を拾っては、何処かへと運んでいる様子だ。まさか? 再び子育てをやり直そうとしているのか? どう考えても春先に巣材を集めていた時と同じ光景だ。まさかと思ったが、どうやら子育てをやり直そうとしているようだ。今度はどこか別の場所に巣を作り直しているみたいだ。

子ガラス達のデビュー

カラスの子育て
ビビと小ガー子たち

そして8月のお盆に入った頃、妻が家の近所の木の中から「ガーガー」鳴く子ガラスの声を聞いたと言う。そしてあたしも庭の草むしりをしていると、どこかそんな遠くないところであの懐かしい子ガラスの「ガーガー」と鳴く声を聞いた。ビビはどうやら2度目の子育てを無事終え、子ガラス達は巣立ったようなのだ。だけどもその姿はまだ確認出来なかった。

それから2日後、仕事をしていると妻からメールが届いた。

「やっぱりいた。お隣さんの屋根の上に、子ガラス2羽とビビが並んで止まっていた。」と。

そして一昨日、ついに我が庭にビビは子ガラス達を連れて遊びに来た。スズメの餌台にカラスが3羽止まって、くず米を食べている。ビビは喧しく「ガーガーガー」と鳴く子ガラスの赤い口に、くちばしを突っ込んで食べ物を与えている。

ビビは1度は失敗に終わった子育てを、再び最初からやり直したのだ。なんと不屈の闘志に満ちたカラスなんだろう。何が起きても不平も不満を言う事なく、ただ自分の勤めを黙々と実行する。人間もカラスに見習わなきゃと思う。これはストア学派哲学の実行者だ。

それにしても子ガラスの声は大きくて喧しい。親鳥にエサをねだる時に「ガーガー」大きな声で鳴き、そして餌を口に突っ込んでもらう時も「グガガガガガァ」と大きな声を出しながら食べている。しかも今年は子ガラスが2羽もいるものだから、喧しさが去年の倍だ。ちょっと近所迷惑にならないかなと心配になる。知らない人があの騒音を聞けば、いったい何の騒動だろうと心配するだろう。それぐらい子ガラス達はやかましい。

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最初の子は死んだ

つい先日お隣さんのおばあちゃんが教えてくれた。

「先月ね、畑で仕事していたら、そこの家の若いのがクレーン車持ってきてカラスの巣を壊していたんだよね。家の前に巣があるとうるさくて仕方がないからって、壊しちゃったんだってさ」

そうか、あの家の人がビビの巣を破壊したのか。これで全て合点いった。ビビの巣は強風もしくはハヤブサなど猛禽類にやられたのか、又は人間によって撤去されたんじゃないのか? と思っていたのだ。

やはり巣の場所が悪かった。その家のご主人はちょっとワル中年で、そんな事をしそうな人なのだ。そのワル中年は仕事柄、クレーン車はいつでも好きに使える。だから簡単にそういう高所の作業を行う事が出来る人なのだ。もう後数日で巣立つぐらいに大きくなっていたカラスだと云うのに、とてもかわいそうな事になった。ビビ達もさぞや無念だったろう。うちらも無念で、残念だ。可愛らしかった子ガラス達に涙を流そう。

それにしてもカラスの巣を撤去したワル中年は、趣味でバイクやらスノーモービルを乗り回している。昼間はよくエンジンの調整なのか、けたたましい爆音を轟かせている。そっちの方がよっぽどうるさいと思うのだがね。

謎のピーマン

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まあ、トラブルはあったものの今年のビビの子育ては無事巣立つところまでたどり着いた。ビビもほんとよく頑張ったと思う。2度の巣作りに子育て、相当体力を使ったと思う。巣を破壊され、子を虐殺されても嘆く事なく、すぐに子育てを再開し、子ガラス2羽を無事巣立させた。あの黒くて小さな身体の中に、よくもまあそんな不屈の闘志、意志、そしてエネルギーが充満しているものだと感心する。命の炎はとても強いものなんだな。

さて、そんな事で現在我が庭は毎日ビビ達夫婦に子ガラスが遊びに来て賑やかだ。餌を食べに来たスズメを蹴散らして、子ガラス達が庭をわが物顔で闊歩している。好奇心旺盛な子ガラスは見ていて楽しい。サクランボの木に止まって何をしているのかじっくりと見て見ると、葉っぱをちぎっては咥えて遊んでいる。

畑に降りて何やら茂みを歩いているなぁと思うと、オレンジ色になったミニトマトをもいで咥えている。咥えてはいるものの食べようとはしない。もぐのが楽しいようだ。トマトの次はブルーベリーだ。まだまだ未熟のピンク色のブルーベリーの実をもいでは地面に捨てている。別の実をもいでは、咥えて何処かにとんで行く。

子ガラスは我が庭で好き放題に遊んでいる。ある意味畑の農作物を荒らされているようなものだ。だが、子ガラス達のこうした冒険を見ていると、とても心和む。人間も野鳥も子供は好奇心いっぱいで、こうした遊びで学んでいくんだと思う。

今朝、家と畑の間の通り道に、なぜか大きなピーマンが一個落ちていた。その周辺にはピーマンなど植えてもいないし、なんでこんなものがこんなところに落ちているんだろうと訝しんでいた。

その時サクランボの葉をちぎっては咥えて遊んでいる子ガラスの姿が頭に浮かんだ。犯人はお前たちか! とニコニコしてピーマンを拾うのであった。

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