ハト子ちゃんよ安らかに 愛するニワトリがキツネに襲われる

ニワトリのハト子ちゃん

ニワトリがキツネに襲撃されてしまった

一昨日の夜(6月3日)は全くもってうっかりしていた。ここの所、毎日我が家の庭に黒っぽい汚い色のキツネがやって来ていた。キツネは鶏を狙っているというのは明らかで、オレ達も十分警戒していた。だけども毎日現われると慣れてしまい、隙を見せてしまったようだ。せっかくカラスも警戒してくれていたというのに。

その日のオレはちょっと頭痛がしていたのと、右足のふくらはぎを痛めていたこともあり、夕方の犬の散歩をサボるなどいつもの動作を省略してしまった。普段なら暗くなる前に、鶏小屋の窓に頑丈な雨戸を取り付けて、鶏小屋に併設している遊び場(金網で囲っている広場)への入り口も閉じるようにしている。

昨日に限ってそれらを後回しにして、食後ソファーで寝ころんでいた。鶏小屋の戸締まりをしなきゃと思っていると、生ゴミを捨てに行った女房の叫び声が聞こえる。

「あっちに行きなさい!」

またキツネが現われたんだなと思っていると、なにやらギャギャギャギャと云う甲高い声が。女房も再び叫ぶ「出て行きなさい!」と。

キツネと勝負した

畑にいるニワトリ
外作業をしているときには、こうやって鶏を小屋から出して遊ばせていました

オレも一瞬にして覚った。これはキツネが鶏小屋に入り込んだと。オレも慌てて、痛む右足の事なんか忘れて鶏小屋に急行する。鶏の遊び場には、パー子が地面に座り込んでいる。鶏小屋の戸を開けると、中は土ぼこりがもうもうと立ち込めていた。ライトで中を照すと、まず目に入ったのは、中央に白いカタマリが倒れ込んでいる。埃まみれになったハト子だった。動かない。

そして小屋の東の片隅にいたのは、やせこけた鋭い目つきのあのキツネがいた。普段なら噛まれることを警戒してキツネになんか近づかないのだが、この時ばかりは違った。ハト子を守るため、ハト子に怪我をさせたキツネを退治するため、躊躇無く走り寄り腹にけりを見舞う。

キックは見事キツネの腹に命中したが、ヤツは素早く小屋の東側に逃げる。縦横2mほどの狭い空間だから、オレも素早く反転して更に1発けりをいれると、キツネは再び西の角っこに向かって突進した。そこには鶏の遊び場に繋がる小さな出入り口があるのだ。鶏は素早くその出入り口を通り抜けられるが、キツネには少し小さく、一瞬で通り過ぎるなんてことが出来ない。キツネが戸惑っている所をオレは再度蹴りを入れ、反撃を恐れてそのまま踏みつける。

このキツネは殺しても良いとその時は思っていた。両足で首と頭を踏みつける。足の下には牙をむき出しにした、憎悪で光る悪鬼のような眼光がオレを睨みつける。牙をむき出しにした口からは涎がだらりと地面に垂れる。オレは構わずに踏みつける。ハト子の敵討ちだ。力を込めて踏みつけるうちに、キツネの動きが無くなった。オレの右目が何かの動きを捉えたので見てみると、ハト子が羽根を弱々しくばたつかせて、お腹を下にして座ろうとしている。よかった未だ生きていた。

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キツネにも襲う理由がある

ニワトリの親子
左はぴーちゃん達の育ての母。雛の左からハト子、ピー男、パー子。ハト子は雛の時から見目麗しい鶏だった。

その時女房は何故かプラスチック製の収穫カゴをもって小屋の中に駆けつけてきた。農家が使っているプラスチックの四角いカゴだ。女房は小屋の中央に横たわるハト子をすぐさま拾い上げ出て行くのを見送る。オレはこのままキツネを踏みつけて止めを刺そうか、どうしようか一瞬の迷いが心に兆した。ひょっとしたらこのキツネは死んだかもしれないと思い、足を緩めた。その瞬間キツネは全力で女房が開けたままにした小屋の戸から脱出していった。

キツネも必死だったが、オレも必死だった。普通なら噛まれるかも知れないと思い、キツネと格闘しようなんて思わなかったろう。キツネも人間が襲ってくるとは思っていなかったに違いない。キツネが出て行き冷静になったときに初めて、右足が酷くズキズキと痛みが走っている事に気がついた。立っているのもやっとの状態だ。まるで戦闘が終った後のキャシャーンのようなオレだった。

鶏の遊び場で蹲っていたパー子は女房が救助して、玄関の風除室の中にいた。襲われたショックのためだろう、ポーッとしたままコンクリートの床の上に立っている。オレはそのパー子を抱き上げ、鶏のケージに入れて家の中に連れていった。このケージは冬の間、夜になると家に鶏を収納するのに使用しているものだ。高齢の鶏の健康を考えて、冬の夜は毎日家に居れていたのだ。

玄関には女房がハト子を抱きしめたまま謝っている。「守ってあげられなくて、ゴメンね」。何度も何度も抱きしめたハト子にそう語りかけている。ハト子は女房の胸の中で息絶えたそうだ。ハト子とパー子は2010年の6月20日頃に孵った鶏だ。後もう少しで9歳になるというのに、オレ達のうっかりのために、まだまだ元気だというのに死なせてしまった。

生き残ったパー子にケガが無いか確認する。やはりキツネはパー子も襲っていた。腰の部分に裂傷があり血が滲んでいた。幸いな事にハト子ほど深いキズじゃなかったため、致命傷にならずにすんだようだ。普段からパー子は触ろうとすると異常に羽根を羽ばたいて逃げようとする。その羽ばたきでキツネが怯んだのかもしれない。

今になって思えば、あのキツネは随分とやせ細っていた。あまり食べていなかったに違いない。ひょっとすると子ギツネのために、一生懸命に餌になるものを探していたのかもしれない。感情に任せて、もしあのキツネを殺していたなら、今ごろ後悔していただろうと思う。憎たらしいヤツではあるが、命を奪うのは間違いだ。

昨年秋の2羽の鶏の様子。小屋の周辺を自由に遊ばせるととても喜ぶ

独りぼっちになってしまったパー子が不憫だ

2羽のニワトリ
カーシャも鶏を良く見張っていました

毎日朝晩、お昼休みなど、鶏が2羽遊び場に出て、地面を掘ったり、何かをついばんでいたりするのを見て楽しんできた。仲良しの2羽の鶏。今はパー子独りぼっちだ。暑い日には、砂場で仲良く2羽並んで砂浴をしている姿をよく見かけた。もうそんな様子を見ることは出来なくなったんだな。

パー子は未だキズが癒えておらず、それにまだショック症状から回復していないように見える。動物には感情が無いという、非人間的な学者には理解できないだろう。鶏には個性があり、感情があり、精神があり、心がある。だからキツネに襲われれば、心にキズを負う。パー子が元気を回復するまでは、今しばらくケージに入れて昼夜問わず家の中に居させることにした。1人であの小屋の中で過ごす事は不憫過ぎる。

元気になっても、これから夜は我が家の中で過ごさせるようにしようと思う。夜にキツネに襲われたという精神的なキズは癒えないと思うのだ。鶏は繊細な生き物なんだよ。

治療中のニワトリ
治療中のパー子ちゃん。精神的なショックから未だ回復せず 背中の茶色いのは消毒薬の色

この騒動の後で女房になんで野菜収穫カゴを持って鳥小屋にやって来たのか聞いて見た。「キツネをこの収穫カゴに入れて捉まえようと思って」。
「で捉まえてどうするの?」
「何処かに逃がそうと思って」
「え? じゃあ、どうやってフタの無い収穫カゴに入れたキツネをそこまで運ぶのさ?」
「そこまでは考えていなかった」

今もその収穫カゴは、住民の居なくなった鶏小屋の中央に転がっている。

見張りをする犬
夜には不審なものが鳥小屋に近づかないか、カーシャもこうやって見張りをするのが日課でした

後日談

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あのキツネの襲撃後に、例のキツネはピタリと姿を見せなくなった。ひょっとしたら死んだのではと思ったが、つい昨日ヤツを我が家からそう遠くない体育施設のグランドを走っているのを見かけた。走るキツネ、そのキツネの頭上には2羽のカラスが大声で鳴いて、嫌がらせのように追いかけている。きっとカタアシ君達に違いない。

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