「1切れのパンが怖い!」 オレのトラウマ経験

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2切れのパン パンがトラウマの原因になった
たかが1切れのパンを怖がる これがトラウマ

トラウマと云えば、、、、、明日のジョー

50歳前後の者がトラウマという言葉を聞けば、あしたのジョーを思い浮かべるんじゃないかなと思う。矢吹丈は力石徹との対戦後、ボクサーとして致命的なトラウマを負ってしまう。

丈が力石に放った右テンプルへのパンチは、彼の命を奪うことにつながった。それがトラウマになった丈は、テンプルにパンチが打てなくなってしまった。丈がそのトラウマを克服するのには、かなりの困難が伴った。

三叉神経痛でトラウマを負ったオレ

これまでオレは、大きなトラウマなんて経験したことがなかった。なのでトラウマがどれほど恐ろしい事なのか、ちっとも理解していなかった。トラウマなんてよっぽどの事が無い限り、一生経験する事が無いんだろうと思っていた。だが、思いもよらぬことで、俺はトラウマの恐ろしさを知る。

これはつい一昨日の朝食時のことだ。食卓には女房が焼いた自家製パンが、皿に乗せられ置かれていた。それを見た時に、俺は心臓がキューッとなった。心臓がバクバクし出す。胃もキューッと縮むのが判る。出来ることなら食べたくない。だがそんな姿を女房には見せたくない。平静を装ってオレはパンを手に取る。冷や汗が額に滲む。大きな塊では口に入れられそうもないから、小指大の小ささにちぎって、そーっとようやく口に運び入れる。

口中のたった1切れの小さなパン。オレはそれを、なかなかそれを噛むことが出来ないのだ。噛む事がとても怖いのだ。ますます動悸が早まる。少し吐き気も感じる。オレは心の中で「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせて、ようやっと一口だけ噛み、そのままパンを飲み込んだ。

結局のところ、残りのパンを同じように食べるなんて無理だった。その前に心臓発作で倒れてしまいそうだ。仕方がないので、一枚のパンを粉々にちぎって味噌汁の中に浸した。ふやけたパンはまるで麸のようだ。そうやって、たった1切れのパンをオレはようやっと食べ切った。

パンが怖い

ライ麦パン 南部鉄のパン焼き機で焼きました
南部鉄のパン焼き器で焼いた女房特製ライ麦パン。粉は地元のメーメーファーム特製

そう、今のオレはパンが怖くて、普通に食べられないのだ。パンを食べることに対してトラウマが生じてしまっているのだ。

傍で見ている女房には、この恐怖感は理解できないだろう。だが当人にとっては、なかなか乗り越えることが出来ない、恐ろしい出来事なのだ。

何故パンを食べることがトラウマになってしまったのか? それは三叉神経痛に原因がある。

これはほんの数週間前の話だ。ここ暫く落ち着いていた三叉神経痛が、突如悪化した時があった。その日は起床直後から、何をしても三叉神経痛の刺すような激しい痛みが、顔に何度も走った。顔を洗ってもダメ、歩こうと不用意に足を踏み出してもダメ。何をしても痛みがオレを襲う。

そして朝食時、薄くスライスしたパンを食べようとした時に、その日最大の痛みが、もう発作と呼べるような痛みが顔に走った。痛みは数十秒止まなかった。

結局その日から3日ほど、オレは痛みに対する恐怖のため寝込んでしまった。その間何も食べられず、水すらもほとんど飲まず、ただ床に横になるだけだった。

3日間寝込んだものの、その後なんとか普通に生活がおくれるようになった。だが、落ち着けば落ち着いたで、再びあの痛みがやってきたらどうしよう? という恐怖感が常につきまとう。特にパンを食べようとした時に。そう、前回パンを食べた時の激痛の記憶が、トラウマになってしまったのだ。

せっかくの女房特製の古代小麦を使ったパンなのに、あの日の発作以降パンを見ると心の奥底で恐怖感が頭をもたげる様になってしまった。パンを食べようとした時に俺の緊張感、恐怖感は最大限に達する。パンを持つ手が震える。これがトラウマってものなんだな。

体験したからこそトラウマの恐ろしさを知る

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実際のところ、最後の発作から2週間以上経過したが、それ以降オレは何も痛みを感じていない。だけども、痛みが来るかも知れないという思いが、トラウマのスイッチを押してしまう。実際の痛みよりも、痛みが来るかも知れないと云う恐怖感の方が生活に支障を来している。

そんなことで、トラウマというのは、聞くよりも実際に体験してみて、非常に大変なことなんだと、オレは初めて実感した。オレの爺ちゃんの格言「百聞は一見にしかず」。まさにその通りだ。体験しないと本当の事は判らない。

昨日の夕食時、女房の何気ない一言で、俺のトラウマが発現した。「こないだご飯食べようとした時、痛くて食べられなかったでしょ、、」。この一言がオレのトラウマ・トリガーを引いた。その言葉でオレは固まってしまう。あの時の痛みを思い出したのだ。もう心臓は止まらんばかりにバクバクと心拍を打つ。

いま口に入れようとしているご飯を、果たしてオレは噛む事が出来るのか? ご飯を口に入れた瞬間、バキッとあの恐ろしい痛みが来るんじゃないのか? 女房のたった一言で、俺はパニック寸前になった。

もう矢吹丈のことをオレは笑えない。丈がテンプルにパンチを打とうとすれば、オレも連れて吐いてしまうかもしれない。それほどトラウマというのは、強烈なダメージがある。

矢吹丈同様オレのこのトラウマも、いずれ解消されるんだと思う。だけども、すぐには無理かもしれない。多少時間はかかるだろうな。毎日少しずつは良くなっていると感じる。

もうこうなりゃトラウマを抱えた人の気持ちを知る良い機会だと思って、自分の心をじっくりと観察しようと思う。

今現在、三叉神経痛の痛みが走ったとしたら、実のところオレが想像しているよりも痛くはないのだ。だが、痛みが来るかも知れないと云う恐怖感は、物凄く心に痛い。

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ここまで読んで頂きありがとうございました。記事をシェアしていただけたら有難いです。 東倉カララ

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