初めての伊豆高原滞在 天城流湯治法の奥義「ハンマリング」を習う 2023年4月

ハンマリングの道具。ハンマリングピックと木づち

退職早々、天城流湯治法の合宿研修を受講する

あたしは3月末に26年間勤めた会社を退職した。本来ならしばらくのんびりしてから、ゆっくりとあれこれしたいところだ。が、そんな時期に天城流湯治法の是非とも習得したい技法、ハンマリングの講習会が伊豆で開催される事を知った。

このハンマリングの合宿講習会は4月9日から13日までの4日間にわたって行われる。講習会場と宿泊所は、赤沢温泉郷内の赤沢合宿所というところだ。初日は9時30分に伊豆高原駅集合だった。その為あたしは前泊しなければならなかった。そんな事で会社を辞めたと思ったら、その1週間後には伊豆にいる事になってしまった。

初めての伊豆滞在

伊豆高原からの景色
前泊した宿の窓からの景色

8日は朝の飛行機で羽田に向かった。そこからが長い。順調に電車を乗り継いでも、伊豆高原に到着するのは午後の3時過ぎになる。北海道から伊豆に行くのは結構な旅だ。とは言え、伊豆に行くのは初めてなので、車窓から見える景色を楽しんだ。オホーツクの人間にとっては、伊豆の風景は南国そのもので、まるで別の国にでも来たような気分になる。

のんびりとおだやかな海岸風景を楽しんでいると、伊豆高原駅まであと5駅ほどのところで、「線路内の倒木撤去作業の為、しばらくこの駅に停車いたします」というアナウンスが車内に流れた。結局その撤去作業の為に、1時間近く余計に時間がかかってしまった。が、これがあとあと良い方に効いてくる。

ようやっと伊豆高原駅に到着したのは午後4時過ぎ。師匠の杉本錬堂先生や、そして妻からも、伊豆高原というのは、リゾート地、高級別荘地だと聞いてはいた。高級別荘地なんて所はこれまで全く縁がなかったが、駅を出てしばらく歩くと、それがどういう所か飲み込めた。

確かにここは田舎ではあるが、ただの観光地とは雰囲気が違うのだ。地域全体が、なんかおしゃれというか、こざっぱりとして、洗練されているのだ。それは住んでいる人にも言える。駅を出て歩き始めると、ちょうど犬の散歩の時間にあたってたのだろう。何組もの犬の散歩に出くわした。

おや? 伊豆高原はちょっと何かが違うぞ。そう、ここらの住人は大型犬を飼っている比率がとても高いのだ。最近では知床のような田舎でも、今では小型犬がほとんどだ。

ところが伊豆高原ではゴールデンレトリバーやスタンダードプードル、その他毛がふさっふさの名前の解らない大型犬を散歩させている。おばちゃんなのに、連れている犬が巨大なんてのはあたりまえだ。さすが高級別荘地だ。人間だけじゃなく、犬まで違う。

へろへろになりながら師匠宅に向かう

伊豆高原 錬堂師匠の自宅
錬堂師匠の自宅。パティシエ時代はここで「菓子の木」というフランス菓子屋をやっていた。今は1階はタイ料理のレストランに貸している。

伊豆高原駅から、まずは錬堂先生の所に向かう。というのもこの日の宿までの途中に、師匠の家があるのだ。なので師匠の家見物を兼ねて挨拶に行く事にした。

地図を片手に歩き出す。プリントした地図には平坦にただ道が書かれている。だが現実の道は上り坂だった。しかも急な上り坂の連続。延々と上り坂だった。どうやらあたしは、宿までひたすら急な坂道を登り続けなければならないようなのだ。

そうここは伊豆高原。高原というくらいだから、平坦な訳がない。ネットのマップを見た時に、そのことに全く気がついていなかった。

歩き始めて数分で汗が噴き出してきた。道の両側は桜並木が続いて、遅い桜がまだ咲いていた。だが、そんな花を味わう余裕なんか無い。背負っているバックパックが重い。というのも合宿、そしてその後の徳島旅行の荷物でいっぱいなのだ。こんな急坂を登るなんて考えてもいなかったので、こんなに荷物を詰め込んでしまった。まったく浅はかだった。

もうこれ以上歩けない位に疲れ果てたところで、なんとか錬堂先生宅に到着した。師匠の家はバスが走るような大きな通りから、さらに奥に入った入り組んだ場所にある。こんなところに誰がわざわざ来るんだ? というようなところに、ここらは商店や、レストランがある。

これが別荘地って奴なのか! もともとは錬堂先生はここで人気の菓子屋を開いていたのだ。わざわざこんなところまで菓子を買いに来るのが高級別荘地というわけだ。現在師匠の自宅は1階がタイレストランに貸し出されて、師匠は2階に住んでいる。

師匠の家のブザーをおすと、あの聞きなれた声が奥から聞こえた。ドアを開けると、玄関内には菓子屋時代の看板が飾ってあるのが目に入った。窓からは伊豆の海が遠くに見える。なんていい景色の家なんだろう。半年ぶりに再会した師匠に挨拶をして土産物を手渡す。

その時師匠は忙しそうだった。たまたま荷物をとりに家に帰ってきたところだという。「おまえ、運が良いぞ」。と師匠は言った。「もうちょっと早かったら、オレはいなかったぞ」と。

その時、電車が倒木の為に停車していた事が頭によぎった。あれがなければ、師匠は不在だったのだ。ああ、全てには意味がある。

師匠に、この日泊まる宿の話をすると、「おい、そこはここからさらに急な上り坂になるぞ。歩きなら30分かかる」。そのことばを聞いた時には、気が遠くなりそうだった。

が「宿の近くまで車で送ってってやるからすぐに出る準備しろ」。という師匠のありがたい言葉を頂く。助かった。

宿の窓からの伊豆高原

ハンマリング講習会

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これがハンマリングに使うボディーピックと木づち

さて翌日からはハンマリング講習会が始まった。講習会場・宿泊所は赤沢温泉郷というリゾート施設内にある合宿所で行われた。受講者は27名。全国各地どころか、ハワイからの参加者もいた。そして天城流湯治法のの特徴でもあるのだが、参加者の殆どは女性だった。男の受講者はたったの5名しかいなかった。

そうだ知らない人は、天城流湯治法って何だ? ハンマリングって何だ? と、ここまで読んでいて思ったと思う。

天城流湯治法というのは、伊豆在住の杉本錬堂先生があみ出したセルフケアを基本とした健康法・整体術の事を言う。従来の鍼灸やツボとは異なった理論で、身体の不調を解消して行くメソッドなのだ。あたしは昨年の6月に錬堂先生の弟子になり、天城流湯治法を学び続けている。

ああだこうだ書くよりも、この動画を見ればどういう事をやるか良くわかると思う。

そしてハンマリングなんだけれども、これは天城流の施術のテクニックの1つ。天城流湯治法は手で身体を緩めてゆくのが基本なんだけれども、木づちと専用のボディピックを使って、より簡単に、効果的に筋肉や骨と骨の間を緩めて行くというテクニックがハンマリングなのだ。

木づちと鉄の棒で叩くと聞けば、なにやら恐ろしげな施術に思えるだろう。だけども実際は釘打ちのようにボディーピック身体に打ち込むのでは無い。ハンマリングに使うピックの中には、スプリングと鉄のボールが入っていて、ハンマーで叩く事により発生した振動を、身体の患部に伝えて、緩めて行くという手法なのだ。このテクニックを使う事により、施術がとても楽になるし、手では中々効果を出せない場所を簡単に緩める事が出来る。

さて、そんな事であたしは伊豆高原の研修施設で4日間みっちりと研修を受けて、ハンマリングの技法を習得してきた。非常に高額な受講料という事もあって、受講中は気を抜く事もなく、先生や先輩方(天城流湯治法の高段者が指導補助に来てくれていた)の言う事を一言でも聞き漏らす事なく、手つきや施術の方法を何一つ見逃さないという気持ちで受講した。

そんな事で一日の講習が終わるとクタクタになる。毎日合宿所から歩いて5分程の所にある、赤沢温泉ホテルの温泉に入浴に行った(合宿所には入浴施設はないのだ)。ここの温泉は風呂が海に面している。しかも露天風呂もあり、風呂からは視界を遮るものがない。まだ日没前の時間に温泉に浸かった時は、まるで海と一体化したような錯覚を感じながら温泉を楽しんだ。至福の温泉だった。

錬堂先生のいう癒やしの大切さが、ここ伊豆に来て良くわかった。錬堂先生が伊豆をとても大事に思っている事も良くわかった。伊豆はただの観光地では無く、癒やしの場なんだな。

4日目の講習が終わればもう夕方だ。その日は熱海に移動して宿泊した。というのも伊豆高原よりも熱海の方が宿代が安いのだ。

だが熱海に泊まったというのに、安いビジネスホテルを選んだので温泉は無かった。まあいいか、伊豆高原で素晴らしい温泉に毎日浸かれたのだから。

そしてその翌日の夕方、東京駅で妻と合流して徳島に向かった。フェリーで。

この話は、徳島旅行記に続く。


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