異次元恐怖症 子供の頃、異次元に行ってしまったんじゃないかと恐れていた

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異次元恐怖症

異次元恐怖症

あたしは子どもの頃、一つの恐怖症におびえていた。それに名前を付けるなら、「異次元恐怖症」とでも呼ぼう。

今ではそんな恐怖症は感じなくなったものの、子どもの頃は始終そんな恐怖を感じて過ごしていたものだった。

具体的に異次元恐怖症がどんなものか説明しようと思う。例えば遠足など学校の行事の朝にその恐怖症が発動する。本当は遠足なので朝から楽しいはずなのに、あたしは恐怖感におそわれつつドキドキしながら家を出るのだ。

実は恐怖症は家を出る前からが始まる。本当は今日は遠足じゃないんじゃないかと、ドキドキとしながら家を出る。いつもの通学路に出たときにまずする事は、他の児童がちゃんと遠足の格好をしているか確認する。ところがそんな時に限って、誰も歩いていなかったりするのだ。

そうすると、異次元恐怖症がジワジワじわと高まってくるのだ。

通学路を歩くのはあたしだけ。他には誰も歩いていない。そしてあたしは遠足の格好をして学校に向かっている。その時頭の中に浮かんでいる疑念は、

「寝ている間にボクは住んでいる世界とそっくりの異次元の世界に行ってしまったんじゃないか。そこはこの世界とそっくりだけれども、だけども一寸だけ微妙に違っている世界なんだ。その世界では今日は遠足じゃないんだ。学校につけば、ほかの生徒はみんな普段通りのかっこをしている。で、教科書も鉛筆も持たず、全く授業の準備をしないで登校したのは自分だけかもしれない」

そんな考えが頭に浮かんできて、心臓がバクバクと打ちだす。そんな時に目の前に1人の児童が歩いているのを見つける。でもリックをしょっていない。やはりボクは、今日が遠足の日じゃない異次元に行ってしまったんじゃないだろうか? このまま学校に行けば、教室で「お前なんで遠足のカッコして学校に来るんだよ〜。アホじゃないのー」とみんなから馬鹿にされてしまう。

そんな考えが頭に浮かんでくると、楽しいはずの遠足なんかもうどうでも良くなってくる。もう怖くて怖くて仕方がなくなる。きっと寝ている間に、別の次元の世界に来てしまったんだ。ここは一見同じ世界に見えるけど、何かがちょっとずつ違った世界なんだ。そしてボクはもう元の世界にはもどれないんだ。

そんな言葉が次々と頭に浮かぶ中、それでも重い足を交互に動かし学校に向かう。すると町民住宅から出てきた子供が目に入った。彼はリックを背負っている。肩には水筒がぶら下がっている。

「よかった! やっぱり今日は遠足の日なんだ。ボクは異次元になんか行っちゃいなかったんだ。」自分が異次元の世界に行っていない事を確認出来て、初めてうきうきと遠足に向けて、学校への足取りが軽くなるのだった。

そんな異次元に行ってしまうという奇妙な恐怖症は、いつしか終ってしまった。

大人になってからの異次元恐怖症

そんな忘れ去った異次元恐怖症だけれども、突然その恐怖の感覚を思い出すときが時たまある。数年前の夏、犬と朝の散歩をしていたときに、その感覚に襲われた。

いつものように愛犬カーシャと朝の散歩に出かけたときの事だ。普段ならこの時間帯は子供たちが歩道を歩いている時間だ。いつもなら沢山の子供達とすれ違うはずなのにその日の歩道は、しーんと静まり返り誰も歩いていない。あまりにも静か過ぎるのだ。誰一人通りを歩いていない静まり返った街。まるで生きているのはあたしとカーシャだけに思えた。

その時突然子どもの時のあの感覚が蘇った。「これは異次元に行ってしまったんじゃないか」。

だけどもよくよく考えてみると、その日は7月の終り。もう季節は夏休みに入っている。子供たちは学校になんか行かなくて良い日なのだ。その事に気がついて、ホットため息をつく。

そう言えば、夏休みは夏休みで、やはり異次元に行ってしまったんじゃないかと、ビビってしまう時があった。と言うのもあたしだけ異次元に行ってしまい、夏休みの終りの日が違っているんじゃないか。クラスであたし1人だけ、学校が始まっているのに、休んでしまっているんじゃないかと。そんな風にびくびくしながら、夏休み最後の日になんどもカレンダーを確認しながら、残った宿題を慌てて片付けていたものだった。

周囲に溶け込めないという思いが大人になっても残る

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今では異次元恐怖症はもう無くなった。その代わりに大人になってからも、いつもあたしはなんだか周囲に溶け込めないなぁ、なんだか浮いてしまっているなぁと云うのを感じている。

そう、あたしはこの社会にはしっくりと来ないのだ。フィリップ・K・ディックがエッセイでこんな言葉を語っていた。

「地球人よりも、宇宙人の方がきっと分り合える」

それを読んだときに、あたし以外にもやっぱりこの社会に違和感を感じる人がいるんだなぁと、とても親密感を感じたのだ。きっとフィルさんも前世で、同じ外宇宙の星生まれなのだろうと思う。

異次元恐怖症。開き直ってしまえばいいんだ。あたしはこの社会じゃ異物なんだ。異次元じゃなく異物なんだ。しっくりと溶け込めなくて当然。そう思えば気も楽になる。

今日も周囲はマスクばかりしている人の中で、1人素顔ですごしている。きっと社会が異次元に行ってしまったんだろう。何処に居たって溶け込めないんだ。知るかそんなもん。そう思うと気が楽になる。

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