ラブラドール犬・カーシャ最後の7日間 前編

カーシャ
4月20日のカーシャ。自宅から踏み切りまで数百メートル。これがちゃんとした最後の散歩になってしまった。

カーシャ最後の7日間

カーシャは我が家に2014年3月30日にやってきた。彼女が1歳10カ月の時のことだ。カーシャは前の飼い主の都合で、我が家に里子として迎えられた。それから7年間カーシャと一緒に毎日を楽しんだ。そして2021年4月28日、カーシャは虹の橋を渡ってしまった。8歳と11カ月の犬生だった。

カーシャは2017年末にアジソン病が発病し生死の境を彷徨うことになった。それから回復し、薬さえ飲んでいれば長生き出来ると思っていた。が2021年に、まさかの悪性腫瘍発覚。しかも極めて悪性度の高い悪性腫瘍だった。

カーシャにそんな腫瘍があると判明したのは2021年の3月だった。それからあれよあれよと云う間に、イボ状の腫瘍はカーシャの全身に増えていった。可能な限り出来る事はやってあげた。だけども腫瘍の増殖度の早さには全く太刀打ち出来なかった。

2021年4月28日午後4時40分。カーシャは虹の橋を渡ってしまった。今回はカララの奮闘も効果が無かったようだ。

カーシャが亡くなって、早くも2カ月が経とうとしている。なんて家の中は静かなんだろう。

そんなカーシャの最後の1週間の思い出を、ようやく書こうと云う氣が起きてきた。

2021年4月21日

サンルームにいつもの様に、じいちゃんがおやつをもって現われる

カーシャは朝からとても力なく感じる。目の表情も辛そうだ。やはり朝食は食べなかった。食べたがるのだが、悲しい顔をしてそっぽを向いて立ち去るのだ。ラブラドール犬が食べ物を前にして何も食べないなんて、何とも切ない事だ。先週ぐらいから食欲が極端に落ちてしまった。カーシャの体が益々やせ細って行く。

散歩は家の周りを歩くのみになってしまった

昼食は、はちみつとヨーグルトを少し舐めた程度だった。そんな状態にも関わらず、オレの出勤時は「応援」をしてくれる。もう力もなくフラフラのはずなのに、オレが出勤しようとすると、スリッパを咥えて、ぶるぶると振り回す。これは何が何でもやらなければならない行為のようだ。

午後に、のぶちゃんが缶のドッグフードを差し入れしてくれた。ササミとカツオの2種類だった。もうほとんどまともに食べようとしないカーシャ。いつもと違うものならひょっとしたら食べるかも知れないと、夕食にこれを出してみる。するとなんと、ほぼ間食してしまった。

食事時になってもカーシャは自分の皿のところにはやって来ない。ソファーでぐったりと寝そべっている。駄目元でカーシャの口元に、皿に入れたフードを差し出す。すると貪るように食べるじゃないか。やはりカーシャはおなかが空いているのだ。食べたいのに食べられない悲しみ。でも、これなら食べられるようだ。やっとカーシャが食べられるものを見つけてあげられて、私達夫婦は少しだけホッとした。

2021年04月22日

4月の中旬からカーシャはずっと下痢が続いていた。タール状の下痢を何度もする。そして日に何度も吐く。そんな事もあって、オレはそうしたカーシャの後始末が日課になっていた。

昨日久々に満足するほど食べたせいなのかか、朝のお見送りはいつもよりずっとキレがなかった。やはりカーシャの「応援」がないと、頑張って仕事をしようと云う気になれない。

お昼に缶のフードををあげるとよく食べてくれた。1缶まるまる食べてくれた。この日は妻もアルバイトで一日中家を空けていた。なのでオレが夕方カーシャの様子を見に行くと、昼に食べたものを全部床に吐いていた。

そしてこの日は、夕食は何ひとつ食べなかった。食べたがってはいたんだけど。匂いを嗅ぐだけで、結局は何も口にしなかった。きっと胃の中にも腫瘍ができているんだろう。だから食欲もなく、そして食べたものを吐いてしまうんだろう。

食べられるものが見つかったと喜んだ、缶のドッグフードだったが、結局食べたのはたった1日だけだった。この日の夕食からは全く食べようとしなくなってしまった。

2021年04月23日

早朝に下痢で起こされる。いつものこと。そして再び起こされて、今度は吐いた。ほとんど何も食べていないと云うのに、カーシャは吐く。吐いたものはほとんど粘液だった。吐いたものの中に食べ物は全く見当たらない。辛いだろうに。

そんなカーシャを見て涙ぐむ。何もカーシャは悪いことなんかしていないんだよと、オレはそうした後片づけをする。

この日は、朝、昼、晩と短い散歩をした。正直なところ、カーシャにはもう散歩出来るほどの体力なんかほとんど残っていない。だけどもオレが「散歩に行こうか?」と誘いかけると、自力で玄関まで歩いて行く。だからほんとに家の周りをちょっと歩いただけの、散歩とは云えない散歩だ。

晩の散歩では玄関を出て3m程歩くのがやっとだった。フラフラと玄関を出て数歩歩む。そしてそのまま立ち止まってしまった。そしてその場に蹲る。カーシャにはこれが限界のようだ。オレはカーシャを抱きかかえて、家に戻ろうとした。するとカーシャは立ち上がり、ちゃんと自力で家にたどり着いた。

4月の半ばからは、動物病院で処方してもらった、痛み止めと下痢止め、そして吐き気止めを毎日飲ませていた。もう固形物は口を通らなくなっているので、この日からは粉末にしてもらった薬を、スポイトで少しづつスポイトで投与するようになった。

そんな状態にも関わらず、掃除機を使うと、戦いを挑んでくるカーシャ

2021年04月24日

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こんな風に一日中ぐったりと寝そべっているカーシャ

朝からぐったりとして、みんなが起床してもカーシャは寝床から立ち上がらなくなった。カーシャはみるみる痩せて、毛もぼさぼさになりとてもやつれている。日中もほとんどの時間、ソファーの上でぐったりとただ寝ているだけだ。

だけどもそのソファーには自分で歩いて登るのだ。誰の支えもなしに。ソファーの上で動かないカーシャ。だけども目だけはギラギラと、みんなの動きを見ているのがちょっとおかしい。

朝の散歩です

夕方散歩に連れ出すと、サンルームの前まで歩いた。距離にして5m程だろうか。だが、そこで力尽き腹ばいになってしまう。カーシャはもうこんな距離も歩けなくなってしまった。数歩歩いては立ち止まり、何度も呼吸をして息を整え歩き出す。

そんな散歩だった。それでも地面の匂いを嗅ぐことだけは忘れない。散歩の最後は抱えて玄関にまで連れ帰った。玄関のかまちの上に上げようとすると、なんと自力で乗り超えたのには驚きだった。

水ももう自分では飲めなくなってしまった。夫婦交代で1日に何度もスポイトで、水を飲ますことになってしまった。水を飲ますと、ペロペロとスポイトを舐める。それもそんなに沢山は飲まない。直ぐにいらないとそっぽを向く。

食事は妻特製のチキンスープを本当に少量だけ飲む。たぶん1回に50ccも飲んでいたいないんじゃないだろうか。たまごの黄身を解いたものをあげると、ようやっと一口食べた。

そんな様子だったのに、夕方友達のアッキーが車でやってきた時は、「ウー」と唸ってサンルームまで出向いていった。これがカーシャが最後に、来訪者を私たちに教えた最後になった。

後編へ続く

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ここまで読んで頂きありがとうございました。記事をシェアしていただけたら有難いです。 東倉カララ

2 Responses to “ラブラドール犬・カーシャ最後の7日間 前編”
  1. 匿名 says:
    • katzZK says:

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