屈斜路湖発、カヌーで釧路川源流川下り 身近にある異世界を堪能 2021年8月8日

釧路川源流をカナディアンカヌーで川下り

屈斜路湖畔

8月8日、この日は弟子屈町(これでてしかがと読む。でしくつではありません)の「そもくや」さんにガイドをお願いして、屈斜路湖発のカナディアンカヌー釧路川・川下りを体験した。


リンク:釧路川源流カヌーツアー「そもくや」

ツアー出発の時刻は朝の6時。斜里から弟子屈町の釧路川源流の屈斜地区まで約1時間20分ほど時間がかかるので、我々は4時半過ぎに家を出発した。かなり寝不足だった。なんだか小学生の頃の遠足前夜の気持ちで、早起きだと言うのに前夜はよく眠れなかったのだ。

出発時刻の20分前には「そもくや」さんの店舗前に到着した。そもくやさんはご主人と奥様の2人で営業している、自然ガイドと雑貨のお店だ。40代前半ぐらいのご主人と奥様、ともに穏やかで感じの良いご夫婦だ。なのでこれからのツアーが、より楽しみに思える。ガイドを務めたのはご主人のツッチーさん。

今回は1時間15分の釧路川川下り・ショートコースをお願いした。オレは病み上がりで体調はまだまだ本調子とはいえない状態なので、川を約3km下る短いコースをお願いしたのだ。

店舗で受付を済ませてさあ出発。カヌーの出発地点は、店舗から歩いて5分ほどの地点にある。

てくてくと5分ほど車道に沿った歩道を歩いてゆくと森が切れて、湖面へ降りられるゆるい斜面が見えてきた。湖水そばの木の根元にカヌーが安置してあった。

ツッチーがカヌーを湖面におろして固定してくれる。女房は舳先(バウ)の位置に乗船し、オレは中央、ツッチーは船尾(スターン)で船をコントロールしてくれる。

屈斜路湖の湖面はとても透明度が高い。手を入れてみると、驚くぐらいにぬるく、女房は「水着を来てこのまま泳いでしまいたい」と言うぐらいだ。この水温は確かに泳ぐのには最適の温度だった。北海道は7月から連続して猛暑が続いている。こんな屈斜路湖で泳げば最高に気持ちの良い避暑になりそうだ。

屈斜路湖遠景
灰色に染まる屈斜路湖。ああなんて8月の道東らしい空の色なんだろう

夫婦でカヌーに乗るのはこれで3度めだが、最後に乗ったのはもう10年以上前の話になる。なのでパドルの漕ぎ方なんかもうすっかり忘れてしまっていた。なので今回はほとんど漕ぐことはせず、ツッチーにほとんどお任せになってしまった。

※始めてカナディアンカヌーに乗ったのは15年前。バウさんという、その世界では知らぬ者のない伝説の人に直接漕ぎ方をおそわった。だけども申し訳ないことにすっかり忘れてしまった。

屈斜路湖は釧路川の源流

釧路川源流
ここが釧路川の源流

さて、釧路川の源流下りと書いたが、いきなり屈斜路湖にカヌーは乗り入れた。屈斜路湖から釧路川に入り遡上するのか? と疑問に思う方も居るだろう。実は釧路川は屈斜路湖から始まっているのだ。

湖の浅瀬をぐるりと回って船に慣れた頃、ツッチーの巧みなオールさばきで、船は吸い込まれるように釧路川の入り口に滑るように入ってゆく。早朝にも関わらず、他にも数隻のカヌーが浮かんでいた。

釧路川の入り口には、橋がかかっている。この橋の下は釧路川の始まり。そう、ここが釧路川の最上流地点なのだ。屈斜路湖を水源とする釧路川は、上流とは云え幅5m程、水深も40cm以上はあるだろうか。他の慣れ親しんだ斜里川上流とはずいぶん様相が異なる。

釧路川源流
橋をくぐればそこは釧路川。釧路川はここから始まります

川の両側に人工物は何も見えない、自然のまっただ中をただ流れに任せてカヌーは下ってゆく。水量の豊かな緩やかな川を、のんびりとカヌーは下ってゆく。あちこちに倒木が川底に沈み、湖面に枝を突き出している。

釧路川をカヌーで下る

ツッチーの操舵で、そうした倒木等を巧みに避けて川を下ってゆく。枝が頭の高さほどの場所では、前屈し枝を避ける。倒木があればすぐ横をすり抜けてゆく。そうしたちょっとしたドキドキも、ガイドの腕の見せ所だ。

ツッチーの説明によれば、100年ほど前はこの川をつかって木を1本ずつ川下りさせて運搬していたそうだ。その時に沈んだ木が未だにそのまま沈んでいるものもあるという。

釧路川をカヌーで下る

すると青い閃光が目の前を右から左へと通り過ぎる。カワセミだった。すぐ目の前の木にカワセミがつがいで留まっている。オレはこれまでカワセミをこんな目の前で見る機会がなかった。カワセミは憧れの鳥の一つ。大興奮だった。その後何度もカワセミは、我々の目の前に現れては消えていった。

カヌーは川の真ん中から岸辺に向かいだす。ツッチーは「手を川の中にずっと入れてみてください」という。最初は生ぬるかった川の水が、岸辺に近づくにつれドンドンと冷たくなってゆく。しまいにはもう手を入れていることが出来ない温度まで急激に下がってゆく。もう冷たすぎて手が痛いほどだ。

釧路川をカヌーで下る
冷たい水が釧路川に流れ込む

「その岸辺に水がコンコンと湧いて川に流れ出ているいる部分があるんですよ」とツッチーが説明してくれる。地下から湧いてくる水は、とても冷たい。たぶん水温は5度以下だろう。スイカを冷やすには最適の水温だ。

そしてその冷たい流域には、たくさんのサケ科の魚が集まってきていた。ヤマメ、アメマス、ニジマスが群れているのが見える。カヌーが近づいても気にせずに、とても美しい魚体が透明感のある川の水面下で泳いでいる。

ウグイの大群
ウグイの大群

カヌーがこんなに接近しても、平気で魚が泳いでいるというのも釧路川ならではと説明してくれる。さらにウグイの大群が船の周りをうろちょろし、そして婚姻色に染まる背中のでっぱったカラフトマスが舳先のあたりに泳いでいた。

釧路川はダムなどの人工物がないため、カラフトマスが上流まで遡上してくる川なのだ。

頭上から水面に落ちてきたスズメガの幼虫

釧路川で非日常を体験

釧路川カヌー下り

1時間ほどのんびりと川を下っていると、気がつけば川幅は20m以上に広がり、水深も1〜2mの深さになっていた。水量も大幅に増えている。ところどころに台風などで倒れた巨大な倒木がそんな川面に横たわっていた。

釧路川をカヌーで下る
葦の生えているところ 葦の葉は180度回転するとツッチーに教えてもらった

ツッチーは浅瀬で船を一旦停船させ、休憩タイムになった。コーヒーと紅茶に、奥さん手作りのパウンドケーキを頂く。こんな川の中で頂く紅茶とケーキの味は最高だった。

奥さんの焼いたパウンドケーキは、卵の風味がとても良く、中標津町のポロニさんの平飼い卵を使用しているという。ケーキにはカシスのジャムが乗せられていて、これはお店の裏にある畑で取れた自家製のジャムだった。そして紅茶は、オレが愛してやまないマカイバリのダージリンティー。とっても良い休憩時間だ。

釧路川をカヌーで下る

やがてカヌーはツアーの終着点に到着。川べりに奥さんが待っていてくれている。カヌーを岸辺につけ、車に乗り再び店舗に戻る。この間1時間20分程。のんびりとただ川の流れるままにゆらゆらと川を下る。なんとも贅沢な時間を過ごした。

終わってみれば、なんだかあっという間に時間が過ぎてしまった気がする。今度はもっと長いツアーを申し込んでみようと思う。釧路川下りはほんと楽しい。斜里から弟子屈町までは車で1時間もかからない町だ。なのにこんな時間の止まったような、異世界にでも行ったような体験が出来るとは思っても見なかった。

屈斜路湖から釧路川下り。これはほんと楽しい。北海道の道東地区に旅行に来られるのなら、ぜひとも経験してもらいたいと思う。ツッチーいわく、真冬のマイナス25度の釧路川下りも最高だという。女房はそんなのは絶対に嫌だと言っていたが、オレはそんな異世界体験のような経験がしてみたい。

始めてカナディアンカヌーに乗船した時に、オレもカヌーがほしいと強く思ったのを思い出した。いつの日か、オレも自分のカヌーを手に入れて、好きな時に川を下ってみようと思うのだ。

これからの観光は体験型が主流だろう 従来の観光はもう過去のもの

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カヌーツアーの帰りに、屈斜路湖湖畔の湖畔の砂を掘れば温水が出てくるので知られる砂湯、そして温泉地で知られる川湯を通過した。砂湯にはキャンプ場があり、湖畔には雨の後のきのこのように数え切れないほどのテントがみっちりと設営されていた。駐車場も車で溢れんばかりだ。いつもの年と変わらないぐらいの観光客であふれていた。

それと対称的だったのは、温泉宿地の川湯だった。街は寂れ、人の気配が殆ど無い。何件もの大型ホテルが廃業して真新しい廃墟になっている。かつての繁栄ぶりを知るだけに、なんとも寂しすぎる光景だった。

今の時代、こうした宿はもう観光客の気持ちを惹きつけられないのだろう。見た目の豪華な食事と温泉だけの観光地の時代は過ぎてしまったのだろう。対照的な寂しい光景だった。

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