帰ってきた1本足のカラス カタアシ君
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姿を消した1本足のカラスの帰還
春の繁殖の時期にさしかかると、それまで毎日我が家の庭に遊びに来ていた1本足のカラス・カタアシ君(ハシボソガラス)が全然姿を見せなくなった。
というのも、体格もよく、気性も荒いハシブトガラスが、我が家のお隣さんの庭木に巣を作ったからだ。そうなるとこのあたりはもうハシブトガラスの縄張りにだ。弱っちいカタアシ君がこのあたりに来ようものなら、ハシブトカラスに攻撃されてしまう。
そのハシブトガラスは、我が家ではカラスのミツオと名付けている。カラスのミツオファミリーは、いつも近所のアマチュア無線の高いタワー(以下ミツオタワー)に止まり、縄張りの見張りに余念がない。そうなると我が家の周囲にカタアシ君達が入り込む余地なんか全く無いのだ。
そんな事で、冬の終りぐらいからカタアシ君の姿を見る事が全く無くなってしまった。
カタアシ君はいったい何処で何をしているのだろう? 突然姿を消したカラスに、オレは心を寄せるのだ。
突然姿を現すようになったカタアシ君
そんな事ですっかり姿を見せなくなったカタアシ君。うまく食べ物にありつけているだろうか? 何処で何をしているのだろうか? 片足がないというハンデを負っているだけにオレは心配だった。何処かで元気に暮らしていて欲しい。玉にはその姿を見せて欲しいと、春からずっと思っていた。
そのカタアシ君が、8月の終りになって突然姿を現すようになった。
出勤時に、道路で干からびたミミズをついばんでいるカラスを目撃した。ミツオにしては小柄に見える。動きがミツオと違う。
車を止めて、そのカラスの様子をじっくりと見てみる。するとそのカラスはミミズをついばんだ後、ケンケンと片足で助走をつけて飛び上がったのだ。久しぶりに見たその軽快な、片足のステップはまさしくカタアシ君のものだった。カタアシ君はそのまま頭上の電線に止まる。
久しぶりに見るカタアシ君は、なんだか少し痩せて、羽根のツヤも若干薄れ老けて見えた。そしてムネには白いツキノワグマの様な白い帯が見える。というのも胸の辺りの羽根がすこし白っぽくなっていたのだ。カラスも歳を取ると羽が白くなるのだろうか?
オレは思わず車を降りて家に駆け戻ってしまった。
「カタアシ君が帰ってきたよ! 何か食べるものをあげて」と、 オレはベランダから女房に伝える。
すぐさま女房は豚の脂身を1切れ持ってきた。それを以前通りに、車庫の屋根に放り投げると、カタアシ君は何の躊躇もなく電線から車庫の屋根にさーっと、音もなく飛び移り、そして肉片をついばんだ。以前通りのカタアシ君の行動だった。
繁殖期が終れば縄張り意識が薄れたのだろう
その日以来、カタアシ君は朝に夕に我が家を見下ろす電信柱や、近所のTVアンテナに止まっているのを見かけるようになった。気がつけばもう一羽ハシボソガラスが一緒にいる。カタアシ君のお友達だ。以前からカタアシ君といつも一緒に行動していたカラスもやって来るようになった。だがそんな風に止まっていられるのも、もちろんミツオ達がミツオタワーに止まっていない時だけだ。
きっと繁殖期が終り、ミツオ達の縄張り意識が薄れたので、カタアシ君が再び我が家の周辺に入り込めるようになったんだろう。ヘタにカタアシ君に餌を与えれば、ミツオ達に奪われてしまう。なのでミツオタワーに奴の姿が無い事を確認してからカタアシ君に食べ物を与えている。
カラスとはいえやはり野生動物。やたらめったら餌を与えるわけにはいかない。が、カタアシ君だけは特別なのだ。何故ならキツネから我が家のニワトリを守ってくれているのだから。
ここまで読んで頂きありがとうございました。記事をシェアしていただけたら有難いです。 東倉カララ