鶏小屋に出没した1匹のドブネズミ 2羽のカラスとの死闘を目撃 そしてネズミの安否を気遣うオレ
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鶏小屋にドブネズミが侵入してくる
鶏を飼っていると悩まされるのが、鶏小屋にネズミがやって来る事。やつらは地面を深く掘り小屋に侵入してくる。
放っておくとネズミは小屋の地面のあちこちに穴を開け、土をほっくり返してゆくので小屋が汚くなる。それに衛生的にも宜しくない。なのでネズミ、たいがいはドブネズミが出没するとオレは捕獲しなければならないのだ。
先月から鶏小屋にネズミが侵入しだした。今回は随分と大きな穴が地面に開いている。なので一昨日の晩にネズミの捕獲カゴを仕掛けてみた。さっそく今朝、鶏小屋を覗いて見るとドブネズミがカゴに入っている。体長15cm程の中型のドブネズミだ。奴はカゴの中からオレに、ぎらぎらと光る黒い目で殺意を送ってくる。ギー−−−−−、ギー−−−−−と威嚇の声を出す。
捕獲したネズミを家の遠くで放すと、、、
さて捕獲したドブネズミをどうするか、いつもここで一寸悩む。水漬けにして殺してしまおうか。殺せば、ネズミの死骸ををその辺に放置しておけば、うちのカラス達のご馳走になる。それとも遠くの別の場所で逃がしてしまおうか?
結局いつも通り、家から遠く離れた場所で放す事にした。軽トラの荷台にネズミカゴを乗せる。放す場所は通勤途中に通りかかる廃屋街にしよう。
放逐場所に着き、ネズミをカゴから出してやる。突然自由になったネズミは、とにかく一刻も早く恐ろしい人間から離れようと全速でオレから遠ざかって行った。
隠れるものの無い道路上を、縁石に沿ってひたすらトコトコと一直線に駆けてゆく。ドブネズミが必死に、全力で走り去ってゆく姿は、なかなか滑稽で、意外だがかわいい姿だった。
何故ドブネズミはの全速力で逃げたのか?
何故ネズミがここまで必死に走っていたのか? その意味が次の瞬間明らかになった。ほほ笑ましいなんて思っていたのは人間だけだ。ネズミは知っていたのだ。これは生死をかけた逃走だと云う事に。
次の瞬間オレの視界に黒い影が左から横切った。するとその影はネズミのすぐ側に降りたつ。1羽のカラスが人間の奇妙な行動を近くの木に止まり見ていたのだろう。走り去るネズミを見て、「食べ物だ」と歓喜して舞い降りてきたのだ。その軽快なステップに、カラスの悦びが見てとれる。
突如頭上から現われたカラスを見てネズミは、右に左に走る向きを変え、カラスを翻弄しようとする。カラスのくちばしは執拗にネズミを追う。カラスは常にドブネズミに対して有利な位置にいる。上空からひらひらと舞いながら、正確に追随する。身を隠す場所が何処にも無い道路の上で、はカラス達が圧倒的に有利だ。
更にもう1羽のカラスが飛来し、2羽でドブネズミを追いつめる。次の瞬間、最初に飛来してきたカラスが、ネズミのしっぽをしっかりとくわえる。哀れドブネズミは、そのまま上空に持ち上げられた。
だがドブネズミだって必死だ。すぐに諦める訳が無い。上空に連れ去ろうとするカラスに対して、必死に体を身悶える。するとその動きでカラスのくちばがちょっと緩み、迂闊にも尻尾を放してしまった。いや、それとも遊びとして、わざとドブネズミを逃がしてしまったのだろうか?
ドブネズミが着地した場所は、すぐ目の前には草地が見えていた。ドブネズミは必死になって枯れ草が生い茂る草地に飛び込んだ。どうやらその草地の地面には、なにか穴など、ネズミが隠れられる場所があったようだ。
カラス達はネズミを見失ってしまった。彼らは最後にネズミを見かけた場所に2羽で降り立ち、くちばしで地面を物色している。トン、トン、トンと軽快なリズムで地面を歩き周り、ネズミの行方を探している。息を潜めているドブネズミの息遣いが聞こえてくるような緊張の場面だった。
捕まったネズミを放しただけなのに、まさかこんな展開になるとは思ってもみなかった。事の顛末を見届けたいところではあったが、もう出勤時刻を経過している。これ以上ここでカラスとドブネズミの追跡劇を見ている訳には行かない。仕方がないので、ドブネズミの幸運を願いつつ現場を離れる。
夕食後に生ゴミを、庭のコンポストに捨てに行く。このコンポスト内も、あのネズミに侵入されていた場所だ。2年間は使えるようにと、深く堀ったコンポストの穴は、ネズミが入り込み大量の土を入れてくれたおかげで、あともう少しで使えなくなるのだ。だがそんな悪戯をしたあのドブネズミはもうここにはいない。
あんな厄介者のドブネズミなのに、居なくなると寂しく感じるのも変な気持ちだ。しかも逃がした直後に、カラスの襲撃を受けて命の危機にひんしている。今日の一日をなんとか上手く生き延びたかなぁ、あのドブネズミ。コンポストの前で、厄介払いしたドブネズミの安否を心配するオレがいるのだ。
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