昭和4年に建造、旧斜里町役場庁舎・旧斜里町立図書館 保存か、取り壊しか?未だ決められず

旧斜里町役場庁舎 旧斜里町立図書館

旧斜里町役場庁舎、旧図書館は昭和4年建造

旧斜里町役場庁舎が建てられたのは昭和4年(1929年)。その後新庁舎建設に伴い、この建物は昭和45年からは図書館として利用されている。そして、オレが始めてこの建物を訪れたのは小学校1年生の時だったから、昭和49年のはず。もうその時点で古い木造の建物で、図書館といえば古い建物という印象がすり込まれてしまった。

その後モダンな新図書館への移行の為、この建物は平成26年(2014年)9月30日に閉館となった。町の施設として85年もの間利用された事になる。閉館以降、この建物は、保存する、取り壊す、未だどちらとも決められず、街を見下ろす小高い丘の上に今も静かにたたずんでいる。

多くの町民に愛されたこの建物。オレも非常に愛着を感じている。このままこの建物を何とか保存してもらえないものだろうかと思っている。

保存するにも多額の資金が必要

保存か? 取り壊しか? 未だにはっきりとした方向性が立てられないのは、何と言っても資金面の問題が大きい。さすがに築90年にもなると、老朽化が進み、建物に傾きが生じているそうだ。屋根も劣化して雨漏りがある、床にゆがみがある等、修理して再利用するにはいろいろと解決しなければならない課題が山済みになっていると云う。現在の耐震基準にも見たたないと云う事も、不特定多数の人が利用する施設として不適当だという。

平成8年に、この建物をこのまま保存するにはどれぐらいの費用がかかるか、町で見積りをした所、何と最大で3億円もの費用が必要と云う結果が出たんだとか。町の年間予算150億円程度の街で、古い建物の保存の為に3億円の支出。これはかなり厳しい話だと思う。

町民からは保存して欲しいと云う声も多いそうで、オレも子どものころから良く利用していたので、とても愛着が有る。子供たちには、古くて怖い建物と云われているそうなんだが、このまま保存できないものだろうかと思っている。

旧斜里町役場庁舎
図書館閉館の日
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今では数少ない、昭和初期の建築物

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また平成26年に北大の角幸博名誉教授による調査を受け、

「道内に数少ない木造役場庁舎で、昭和の施設に多用された建築様式を残す点で貴重」

と言う評価を受ける。

平成28年には町民有志のこの建物の保存を求めている団体・里の会により、「旧斜里町役場庁舎」という看板が門のすぐ後ろに設置された

オレみたいに子どものころから親しんできた者としては、この建物は単なるノスタルジアを越えた愛着がある。斜里を象徴する建物だと思っている。見れば見るほど、美しい建物だと思うよ。

オレが子供の頃には、この建物の2階は知床博物館の前施設としての、資料館にもなっていた。閲覧するには確か30円から50円程かかったと思うが、ダイオウイカのホルマリン漬や、その他古い史料が展示されており、何とも云えない不気味な氣に満ちたその空間は、非日常の世界に紛れ込んだ様な氣持ちにさせられた。怖いながらも、覗かずにはいられない大好きな場所であった。

また建物横にには、傷ついたオジロワシ・オオワシの保護舎が設置されており、目の前で巨大なワシを見る事が出来た。図書館について語れば、思い出はつきる事が無い。

旧斜里町役場庁舎 図書館としての最後の日
図書館閉館の日に撮影

多くの町民が保存を望んでいても、何と云っても資金の問題は大きく、それが町が決断を下す上での障碍になっているようだ。

一部で保存に向けた動きが現われていると聞くが、何にしても巨額の資金が必要だ。今のご時世、クラウドファンディングを活用するなんていう手もある。新しい大学を造るなんて事よりも、この古い建物を保存する方がお金が集るような気がして仕方がないのだが。

社会人になってからも、昼休みに勉強の為に、2階の閲覧室兼学習室を良く利用した。誰も居ないだだっ広い部屋にたった1人。静かな時間。窓の外を見るとそこには、町並みの向こうに斜里岳がそびえている。何とも贅沢な空間だった。


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