先代社長が亡くなって1年。何も残さず消えるのが一番良いと思う

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消える そしてまた復活する太陽

先代社長が亡くなって1年

去年(2017年)の9月27日に、前社長が亡くなった。なんか、あっというまに1年間が過ぎちゃったな。その日は、仕事が終わった後、そのまま見舞いの為に前社長の入院する隣町の病院へ足を運んだ。

前社長は7年前に脳梗塞で倒れ、それからずっと病院と介護施設の間を行ったり来たりをしていた。

当初は言葉が出ないけれども、体はそれほど酷い状態では無かった。だが、なんせ通夜の席で住職が故人の人柄に触れて「自分に優しい」と云われちゃうほどの努力嫌いの人。リハビリを懸命にするなんてことは全くなかった。

だから右手は曲がったままで固まってしまった。足はどんどん衰えてしまい、脳梗塞で倒れた直後はぎこちなくだが立って歩けたのに、亡くなる数年前には車椅子がなければ移動出来ない体になってしまった。

糖尿病も悪化して透析する体に

おまけに持病の糖尿は悪化する一方。死の2年前から人工透析を受ける身になってしまった。透析を受けるようになってからの体の衰えは、地下鉄新御茶ノ水駅のエスカレーターのようだ。あれよあれよと急降下。医者曰く年齢は60歳だが、体は80歳の老人と一緒だと言われてしまう。

社長の体は徐々に衰えていったが、2018年の9月に入てからとくに、衰弱が一気に進んだ。その月のあたまに医者から、容体が思わしくないと伝えられる。9月の後半になると、何時亡くなってもおかしくない状態だという。

血糖値は上がらず、肺も真っ白になってしまった。いつリンリンと臨終のお知らせが来てもおかしくない日々を、社員は何時も通りに仕事をしていた。

前社長は脳梗塞で言語中枢がやられていた。だから見舞いに行ってもまともに話が出来無なかった。会っても間が持たなく、それが嫌でそれまでなかなか足が向かなかった。だから見舞いには1年に1度行くか行かないか。その日会うのもほぼ1年ぶりだ。

社長の最期 見送ったのは社員だけ

病室にはすでに他の社員も集まっていた。ベッドに埋もれるように眠っている社長は、空いたままの口で浅く呼吸をしている。もう十分な酸素が自分では取りこめないため、その口には酸素マスクが付けられていた。右目は閉じられていたが、左目は薄く空いている。どんよりとした鈍い光がわずかに灯っている。

時折目を見開き、目だけで左右を見回す。その時だけ目に何らかの意識が感じられるが、それも極わずか数分間だけの事。後は目を閉じているか、死んだような半目が空いているだけだ。もう、呼びかけても、とくにこれと云った反応が見られなかった。

でっぷりと太り、いつも元気で、飲み会になると信じられないほどの量の酒を飲んでいた時の面影は、もうそこにはない。54歳で倒れたので、その時61歳になるのだが、そのベッドに横たわっているのは、もう何年間も寝たきり状態の80歳以上の老人にしか見えなかった。

脳梗塞、糖尿病、腎臓病、人工透析。結局の所前社長は一度も良くなる事なく、徐々に衰えて、今まさに死のうとしていた。普通ならこんな時には家族や親族が付きっきりで看護しているのだろうが、前社長の両親はとうに亡くなっていて、本人は一度も結婚した事がない。弟夫婦は内地にいる。

天涯孤独の身に限りなく近い存在だ。だから今日明日が山だと云われても、前社長の周りにやってきてくれるのはわずか5名ほどの社員だけだった。

オレがこの会社に入ってその時はちょうど20年目。前社長が元気な時には、ずいぶんと酒をおごってもらったものだ。だがこのような別れになるとはね。容体は良くないとは言え、家族でも無いから、いったん各自、家に帰る事にして病室を後にした。

そのちょうど一時間後、前社長は亡くなった。誰も観とるもののいない中、1人でひっそりと逝った。それも前社長らしいとオレは思う。亡くなる姿を誰にも、社員なんかに見られたくなかったんだと思う。時折目を開けて左右を見渡すのは、誰も居ない時を待っていたんじゃないかなって、今じゃ思う。前社長は変なカッコつけをする人だった。

親族が1人も来ない初七日

初七日に親族は誰も来られないので社員全員がお参りをした。何とも不思議な光景だが、独り者の前社長なのでしょうがない。これぞまさしく家族企業だな、と笑うしかない。

前社長はこの田舎の零細印刷屋の2代目で、先々代社長が亡くなった時に、彼が38歳の時に後を継いだ。母親も早くに亡くしている。マザコンだったのだろうか? 女性の好みがうるさいのか、自由でいる事が何よりも好きだったのかわからないが、結婚には縁がなく死ぬまで独身だった。

前社長は決して女性が嫌いでは無かった。酔っぱらって女性の胸や尻を触っているのをこれまでも何度も見ている。そんないやらしく触ってくる男を、夫にしたい女なんてまずいないな。そういう女は商売だから触らせているわけで。

前社長は親から多額の遺産を受け継ぎ、誰からも五月蝿く云われないから、なんでももう好き放題だった。毎日のように良いものを食べて飲んでといった生活が続いたせいか、お腹はでっぷりと出て、終いには糖尿病になってしまった。

だからといって飲み食いをあきらめる前社長では無いから、それまでよく飲んでいた日本酒を焼酎に換え、日中はコーラーからダイエットコーラに換えたというのが本人の健康に対する配慮のつもりだろう。

オレが思うに、このダイエットコーラと云うのが、最悪の選択だった。ダイエットコーラに含まれる合成甘味料は脳腫瘍など脳を破壊する。おまけに血糖値も急上昇させるなど、糖尿病にもちっとも良くない。これらの事はちょっと調べればいくらでも出てくるけれども、そんな毒水をダイエットに良い、健康に良いと思ってどんどん飲んでいた。

全て綺麗に地球に返してお別れが一番

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そんな訳で、明後日9月27日に前社長の1周忌を迎える。参拝する家族は斜里に単身赴任で帰ってきた前社長の弟だけ。今回の1周忌はその弟と社員のみがお参りする。その後墓に納骨をして終了。何とも寂しい様に思えるが、そんな事を感じるのは残された者の心。当の本人はもうどうとも思っていない。

いずれオレも同じように燃やされ灰になる。その後には何も残るものは無い。数年もすれば、オレの事なんか人の記憶からも消えるだろう。何も残そうなんて思っていない。だから消え去るで結構。死んだら直ぐに火葬場で燃やしてもらいたい。

戒名なんかいらないし、同級生が僧侶をしているが、読経も葬式もいらない。四十九日や年忌みたいなものも不要だ。遺骨は海にでも撒いてくれれば願ったりかなったりだな。墓なんか土地の無駄遣いだと思っている。どの家の墓にも入れないで欲しいと強く思う。無名の凡人はこの世に何も残さず、全て綺麗に地球に返してお別れするのが一番だとオレは思っている。

ミュージシャンは死んでも、その後に作ってきた楽曲が残り続ける事もある。誰が作ったか、誰が歌ったか忘れられても。音楽は神、天、宇宙への捧げ物だから、永遠の命がある。そんな残すモノがない者は、静かに消えて行くのが良いと思う。

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ここまで読んで頂きありがとうございます。

私の記事をソーシャルメディア等でシェアしていただければありがたいです。 東倉カララ

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