金色に光り輝く脚で天駆けるカーシャ この世とあの世では価値が逆転する
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カーシャの左後ろ足指の怪我
カーシャは2020年の11月末の散歩中に、左後ろ脚のツメを折ってしまった。上半分が剥がれてしまうという、獣医曰くとても珍しい折れ方をしてしまった。その時は単なる怪我だと思っていた。だけども、カーシャのその足の指の傷を見た時に、何とも言えない変な気持ちが襲ってきたのが忘れられない。この怪我は『これだけで、すまないぞ。』と、何かが小声で囁いたのだ。
怪我の経過が思わしくない
その怪我はカサブタになっては、また剥がれて出血するということを何度も繰り返した。そのうち下半分の凝っていたツメが徐々に剥がれて、その指の爪が全く無くなってしまった。爪の中の肉は引っ込み、爪のあった場所に赤い丸い穴が開いたような状態になってしまった。それから指が徐々に腫れていった。これは2021年1月頃のことだ。
消毒しても、抗生剤を飲ませても腫れは収まることなくどんどんと酷くなる。最後には手術をして、溶けた骨を除去したものの、さらに腫れは酷くなる一方だった。
どうやらその傷はただの傷ではなく、足指が腫瘍化してしまったようなのだ。
結局カーシャのその足は、死ぬその時まで良くなることだけは１度もなかった。最後には元の指の6〜7倍ほどの大きさまで膨れ上がってしまった。常時汁を出し、そして腐臭を発していた。
そんな足だからカーシャも快適なわけがない。散歩に連れ出しても、足を地面に着かないように歩き、それでもギクシャクと走っていた。最後にはもう感覚もなくなったのか、とぼとぼと普通に歩いていたカーシャ。不憫で見ていられなかった。
そんなカーシャの足は、いつもカラーバンデージで巻かれ、赤や黄、オレンジ色に輝いていた。
今ではカーシャの足指の傷はただの傷ではなかったとわかっている。あれは悪性腫瘍がそうさせていたのだ。そうは思うものの、未だに去年の11月の散歩時に、もっと気をつけて歩かせていれば、爪が折れるなんてことがなかったのにと悔やみが心の奥底に残っている。
いや怪我をした直後にもっとしっかりとケアをしていればこんなことにならなかったのにと。いやそうじゃないことはわかっているのだけれど、それでもオレの判断ミスでカーシャがこんなことになってしまったんだと、自分を責めているオレがいる。
この世とあの世では価値が逆転する
マダモアゼル愛先生はyoutubeのビデオで「この世とあの世は価値が逆転すると」おっしゃっていた。「この世で汚いものは、あの世では貴重なものになるんだよ」と。この世のウンコは、あの世では金になるそうだ。
カーシャはこの半年間左後ろ脚の怪我が治らず、そしてしまいには腐臭を放つようになってしまった。もはや傷というよりも、脚指そのものが悪性腫瘍化していた。患部からは汁が常に滲み、肉も崩れてしまう事から、カーシャの左後ろ足は常時包帯を巻くしかなかった。
腫瘍は傷口のみならず、足首から腿にかけて大量にしこりを作り、触れば皮膚の下はもうボコボコ状態だった。カーシャはそんな足でも、一生懸命最後の時まで歩いていた。
愛先生の云う通りなら、今あの世にいるカーシャの左後ろ足は、皆が羨む脚になっているだろう。この世で膿み腐れてしまった左後ろ脚は、あの世ではまぶしく金色に光り輝く、誰もが羨む脚になっているのだ。光り輝き、誰もが追いつけないほどのスピードで走ることの出来る脚だ。
「まぶしいぞ！ 誰だ？ あの光り輝く脚を持つ犬は？」
「なんだこの高速の閃光は！」
「あれはカーシャだ」
「カーシャ！カッコいい！」
「カーシャ素敵！」
今頃、そんな風に周りの犬たちに羨ましがられているに違いない。あの世とこの世では価値が逆転するのだ。だからこの半年のカーシャの苦しみは、これから喜びに変わるんだ。半年間苦しめられたカーシャの脚は、今度は皆が羨む黄金の脚になっているのだ。
おっと忘れていた。カーシャの脚指の傷のケアには、金箔を貼り付けたりしていたんだ。炎症が少しでも治まればと思って、腐れ爛れた指に金箔を貼り付けていた。埋葬の際もそのまま金箔が張り付いたままだった。カーシャは金箔まみれの脚指で、虹の橋を渡っていったんだった。
しまった、この世とあの世では価値が逆転するんだった。腐れた足が黄金の足になるのは良いとして、脚につけた金箔は、あの世ではうんこになってしまったかもしれない。となると、あの世で金に輝くカーシャの脚のつま先には、ちょっとウンコが付いてしまっているかも知れない。
ごめんねカーシャ。
ここまで読んで頂きありがとうございました。記事をシェアしていただけたら有難いです。 東倉カララ