「カーシャの応援」ラブラドール犬とスリッパの思い出 壊された30組のスリッパ
Table of Contents
カーシャとスリッパ
玄関の靴箱横の暗がりに、へたへたになったオレのスリッパが埃まみれで放置されているのに気がついた。しばらく前まで室内ではスリッパを履いていたのだが、カーシャが噛みたおして、振り回してボロボロにされるのが嫌で、この頃は履かないようにしていたのだ。なんだかカーシャの形見が出てきたような気持ちになった。
カーシャは我が家には、2歳直前の成犬としてやってきた。大人になってからやってきたと云う事もあるけれど、ほんとカーシャはお利口な犬で、家のものを何一つ壊さなかったと言ってよいほどだ。
それは先代犬のカララと全くの好対照だった。カララはシニア犬になるぐらいまで、なんでも壊された様に思うぐらい、ほんとに何でも壊された。
あまり知られていない事実なのだが、ラブラドール犬と云うのは破壊王なのだ。
そんなおりこうさんのカーシャちゃんの唯一の例外がスリッパだ。スリッパだけは、本当に何足もダメにされた。正確に数えてはいないのだが、年に3〜4組はダメにされている。単純計算で彼女の生涯で、20〜30組みのスリッパをボロボロにしたと云う事だ。
どうしてスリッパがそんなに壊される?
どうした事なのか、カーシャは何かきっかけがあるとスリッパを咥えてぶるぶると振り回すと言う習慣があった。例えばどんな時にそんな事をするかと言うと、
・オレの出勤時
・オレと妻が出掛ける時
・掃除機をかける時
・お風呂が満水になりブザーが鳴り止めに行こうとする時
・お客さんがやってきた時
・サンルームで見張っている時に猫やキツネが現われた時、等々
そんな時にはスリッパを咥えて、しかも可能なら2足、ぶるぶるぶると振り回すのだ。しっかりと噛みしめて振り回すものだから、がっつりと歯がスリッパ素材に食い込む。そんな事を繰り返していると、だんだんと腰のないヘナヘナのスリッパになり、しだいに役立たずのスリッパになってしまうのだ。
どうしてカーシャがこんな事をするのかはわからないが、我が家に最初に来た時から振り回していたと思う。
スリッパ振り回しを「応援」と呼んでいた
我が家ではこのスリッパ振り回しを「応援」と呼んでいた。毎朝オレの出勤時はカーシャは大ハッスルだ。出掛けようとすると、吠え出し、そして何か咥えるものがないかあちこちを探し出す。オレが脱いだばかりのスリッパを見つけて、ぶるぶると振り回す。オレのスリッパが取れなければ、女房が履いているスリッパを噛んで横取りしようとする。
そんな事をするものだから、何度か女房はカーシャに踵を噛まれて痛い思いをした。なのでこの1年ほどは、カーシャが咥えるものを探し出すと、女房は自ら履いているスリッパをカーシャに放り投げるようになった。なんだか時代劇か何かで、賊に襲われた武士に「先生、これを」と、刀を放り投げるようなシーンを見た事があるが、それを彷彿させる光景だ。
そうしてスリッパを得たカーシャは、激しくぶるぶるとスリッパを振り回し、そして上体を低くして、前脚を激しくバンバンと床に打ち付ける。それが毎朝オレの出勤時の光景だった。
残念ながら、この出勤時の光景はうまく動画に記録されていないけれども、同じように掃除機に向かって「応援」しているカーシャの姿は記録している。それが上の動画。
こんな事をしていれば、そりゃあスリッパなんかあっという間にダメにされちゃうね。
新しいスリッパが直ぐダメになるので、ホント困っていたし、やめて欲しい習慣だった。こうしてカーシャが居なくなってしまった今、「応援」が無くなってしまった事がひどく寂しく感じる。そんな静かな出勤に、最近ようやく慣れてきたところだ。
ここまで読んで頂きありがとうございました。記事をシェアしていただけたら有難いです。 東倉カララ