ラブラドール犬は破壊王 カララ、玄関ホールの床を掘る。大穴を開ける
Table of Contents
玄関ホールの床に散らばる木くず
これはもう20年近い前の話だ。
その日は午後から片頭痛が酷く痛んだ日だった。それでも夕方まで仕事をして、何とか帰宅する。頭の左側は脈をうつようにズキズキ激しく痛んでいた。
家にはかわいいカララちゃん(ラブラドール犬)が独りで留守番をしている。だから何が何でも帰宅せねばならないのだ。目はチカチカと光が眩く感じる。左側頭部の痛みはジンジンからズンズンとより痛みが強くなる。それでも何とか車を運転して、その当時住んでいた農村地帯の一軒家に到着した。いつもなら15分で到着するところが、20分以上かかってしまった。
玄関を開けた瞬間、カララが大興奮でオレを迎えてくれた。オレが玄関を開けると、今からダッシュしてけ毛つける。オレの目の前でグルグルグルと玄関内を廻り出す。頭がズキズキと痛むが、それでもとても嬉しい瞬間だ。
だが玄関ホールの上でグルグルと廻っているカララの足下の異変をオレは見逃さなかった。
朝には何も無かったはずの板の間の上に、何やら木くず状のものがそちこちに散らばっている。しかも何か黄色いワタ状の物まで散らばっている。これはいったい何だ?
興奮して飛びついてくるカララを押しのけつつ、散乱している物体をよく見てみる。これは間違いなく木くずだ。いったい何処から? そしてこの黄色いワタ状のものは、グラスウールだ。どうしてこんなものがここに散乱しているんだ?
いったいカララはこんなものを何処から持ってきたんだ? ズキズキと脈打つ頭を抱えつつ、意識も混乱した中必死に原因を探ってみる。
すると玄関ホール左手の床に穴が開いているのが目に留まった。まさか! 目の錯覚かと思ったが、間違いなく暗がりの板の間の上に、穴が開いているのが見える。大きさは約20cm程。穴の縁はぎざぎざになった、いびつな楕円形の穴がそこに存在していた。もちろんオレの出勤時には、そんなものはない。
カララだ、犯人は。カララがやったんだ。だがいったいどうやったら、こんな事ができるんだ?
床の穴はともかく、こんな事をしたからにはカララが怪我をしていないかがまず心配だ。こんな風に床をに穴を開けたのなら、木くずやトゲが顔や足に刺さって怪我をしているかもしれない。
だけどもそんな事は杞憂だった。カララの顔も足も、何処にも怪我は無い。グラスウールを齧ったのなら、ガラス繊維が顔に刺さっているかもしれない。顔に細かい繊維が刺さっていたり、口の中にキズが無いか心配だ。だけども、何処にもそんな形跡は無かった。血の滲みすら見つからなかった。
ホッとしたものの、次には激しい怒りの感情がやってきた。頭が激しく痛いというのに、帰宅早々こんな後始末をしなければならないのだ。玄関ホール内は、木っ端やグラスウールで散乱している。
まとわりついてくるカララに「あっちへ行け!」と怒鳴りつけ、足げにする。カララはオレの気分を害したことを理解して、すぐさまハウスの中に避難した。
その日、カララは散歩にもつれていってもらえず、夕食も抜きだった。罰だ。激しく痛む頭を抱えて帰宅してみればこの惨状。もう何もする氣が起きず、オレは玄関のゴミも片付けずにそのまま布団に潜って寝てしまった。
翌朝カララのお仕事の検証をする
翌朝カララの掘った床の穴を現場検証してみた。穴の中を覗いてみる。北海道の場合床板の下にはグラスウールが敷き詰められている。そのグラスウールはむしられて、ちぎられて外に出されている。グラスウールを敷くためにさらにその下に薄い板を張っているのだけれど、その板が丸見えだ。その板をはがせばあとは地面が見えるだけだ。よくもまあここまで掘ったものだと感心した。
どうやってこんな穴をあけたのか、さっぱり見当もつかない。床を引っ掻いてキズをつけたなんてレベルではないのだ。板の間の板に大きな穴を掘ったのだ、カララは。
カララは暇に飽かせて、一日中爪でひっかいて穴を開けたのだろうか? ある程度穴を開けたところで、あとは口で穴を広げたのだろうか? 全くもってどうやったらこんな穴を掘れるのか、想像出来ない。だがカララがここに穴を掘ったことだけは間違いのない事だ。
もうここまでの事をしてくれれば、アッパレというか、笑うしかない。とにかくカララが怪我しなかったことだけは幸いだ。
漏水で床材が腐っていたのか?
もともと玄関のその部分は大家さんが大型ストッカー(冷凍庫)を置いていたところだった。床には少ししみがついて居たことから、霜取りの度に水を漏らしていたようだ。度々水を漏らし、それが木にしみ込み、時間が経つうちに腐食してその部分だけ掘れやすくなっていたのかもしれない。
カララの母犬は成田で麻薬探知犬をしていたという。その血筋を引いているせいか、カララはとても鼻の利く犬だった。
長い留守番中に暇をしているカララ。床のその部分だけ他の場所と匂いが違うことに気がつく。引っ掻いてみると、表面が削れて行く。これは面白いぞ! 引っ掻けば引っ掻くほど床のキズは広がり、やがて穴になって行く。もうそうなると止まらない。最初小さな穴は、どんどんと広がって行き、さらにはグラスウールも見えてきた。そんなものが見えてきたら、引っ張り出さないわけには行かないじゃないか。そんなカララの様子を想像してみた。
そうだ、カララはクッションや人形などを壊しては、中のワタをぜんぶ外に出してしまうのが好きな犬だった。カララにとっては、床だろうが、人形だろうが同じようなものなんだろう。壊して中から何か出てきたら、引っ張り出すのが原則なのだ。
そんな事で、玄関の板の間に大穴が開いてしまった。そのままにしておくわけには行かないので、カララが空けた穴よりもずっと広い範囲に上から板を打ち付けてふさぐことにした。完全に腐っている部分を覆ってしまわないと、再びカララに掘られてしまうかもしれないからだ。
カララはとにかく何でも壊す犬だったが、これが最大の破壊行為だった。今になってみれば良い笑い話だ。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
私の記事をソーシャルメディア等でシェアしていただければありがたいです。 東倉カララ